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『行鉢(ぎょうはつ)』 その二

展鉢が終わると再びお唱え(念誦)をします。槌砧(木槌)或いは拍子木一声にて一同合掌し、まず維那が「仰惟三宝咸賜印知(にゃんにさんぽうあんすいんし) 仰憑尊衆念(にゃんぴんそんしゅうにゃん)」と唱えます。これは仏法僧の三宝に対し「仏として食事を頂く私たちをどうぞお認めください。さあ、一同声を合わせて仏法僧の名号を念じましょう」と仏法僧の三宝に仏行として食事を頂くことを誓うのです。再び槌が打ち鳴らされると、一同同音に十仏名をお唱えします。

「清浄法身毘盧舎那仏(しんじんぱしんびるーしゃーのーふー) 円満報身盧遮那仏(えんもんほうしんるしゃーのーふー) 千百億化身釈迦牟尼仏(せんぱいかしんしきゃーむーにーふー) 当来下山弥勒尊仏(とうらいあさんみるーそんぶー) 十方三世一切諸仏(じーほーさんしーいっしーしーふー) 大乗妙法蓮華経(だいじんみょうはりんがーきん) 大聖文殊師利菩薩(だいじんぶんじゅすりーぶーさー) 大乗普賢菩薩(だいじんふえんぶーさー) 大悲観世音菩薩(だいひかんしいんぶーさー)
諸尊菩薩摩摩訶薩(しーそんぶーさーもーこーさー) 摩訶般若波羅蜜(もーこーほーじゃーほーろーみー)」(清浄法身毘盧舎那仏~十方三世一切諸仏までが仏宝・大乗妙法蓮華経と摩訶般若波羅蜜が法宝・大聖文殊師利菩薩~諸尊菩薩摩摩訶薩までが僧宝)

維那は一仏ごとに仏頭、仏足を打たぬよう槌を打ち拍子を取ります。

十仏名を唱え終えると首座が一人で施食の偈(呪願)を唱えます。

粥時呪願「粥有十利(しゅうゆうじり) 饒益行人(にょいあんじん) 果報無辺(こほーぶへん) 究竟常楽(きゅうきんじょうらー)」(お粥には十の能きがあり修行僧を利益してくれる。その無限の果報によって憂いなく修行に邁進できますように)※十利とは①色:顔色を良くする②力:力がみなぎる③寿:寿命を延ばす④楽:食べ過ぎても苦しくならない⑤詞清弁:言葉が爽やかになる⑥宿食除:もたれない⑦風除:風邪を引かない⑧飢消:空腹を満たす⑨渇消:喉の渇きが消える⑩調適:便通が良くなる

斎時呪願「三徳六味(さんてるみ) 施仏及僧(しふぎゅーすん) 法界有情(はかいゆうじん) 普同供養(ふずんきゅんにょう)」(三徳六味の具わった食事を仏と僧に施し、生きとし生けるものすべてに供養します)※三徳とは①軽軟:かるくてやわらかい②浄潔:けがれなくきれい③如法作:教えにかなって調理されている ※六味とは①苦:苦い②酸:すっぱい③甘:あまい④辛:からい⑤醎:しおからい⑥淡:あわい

 

十仏名のお唱えが終わると浄人によって食事の給仕が始まります。僧衆は慎み敬う気持ちで食事を受けなければなりません。まだ自分が受ける番でもないのに器を出して食事を要求したり、自分から食事を取ろうとしたりせず必ず浄人の給仕を受けます。浄人もまた、速やかに且つ丁寧に給仕をして回らなければなりません。僧衆を慌てさせたり、待たせたりするようなことがあってはなりません。お互いが不快の念を抱かしめないよう気を配ることで僧堂行鉢は成り立つのです。

小食(朝食)では頭鉢に浄粥(お粥)、頭饙に香菜(お漬物)、第二饙に胡麻塩を頂きます。中食(昼食)では頭鉢に香飯(ご飯)、頭饙に香汁(汁物)、第二饙に香菜を頂きます。浄人が自分の前にやって来たら合掌低頭してそれぞれの器を取り、両手で平らかに捧げ持って浄人に差し出し(或いは手渡し)、自分が食べたい量が盛られたところで、右掌を少し上に上げて「もう結構です」と合図を出し給仕を止めてもらいます。こうすることで応量器の「応量」、それぞれの食べたい量に応じて食事を頂くことが出来るのです。食事の給仕が終わると三度お唱えが始まります。つづく

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